学習のポイント

・無権代理について、その効果と相手方がどのような保護を受けるかについて、具体例をイメージしながら理解しよう。

① 代理

(1)代理とは

たとえば、AがBからB所有の建物とその敷地(土地)を買いたいときに、A自ら購入の行為をせずに、Cに購入行為を代わりにしてもらい、売買契約の効果はAB間で発生するということができます。この場合、買主Aを本人、Bを相手方、Cを代理人といいます。代理人CはBに対して「Aの代理人である」旨を告げる必要があります。契約が成立すれば、AはB所有の建物と土地の所有権を取得し、Bに対して代金の支払い義務が生じます。

②代理成立の要件

(1 ) 本人が代理人に代理権を与えたこと(代理権の存在)

① 任意代理

本人が代理人となる者に代理行為を頼む場-合、口頭でもよいが、普通は委任状を交付します。P.24の図の例では、AがCに、自分の代わりにBの建物と土地を購入する行為を頼むことです。

② 法定代理

法律上、代理人となることが決められている場合で、たとえば、未成年者の親権者などがあります(民法5条1項、818条)。

(2)代理人が相手方に本人のためにするということを表明していること(顕名)

代理人は自分が当事者でなく、自分以外の者(本人)の代理人としての意思表示であることを相手方に明らかにする必要があります(民法99条)。 上図の例では、CがBに対して、AがB所有の建物と土地を書いたがっているので自分が代理人として契約したいと表現することです。
これに対して、CがBに対して、Aのために建物と土地を買うことを表現しないで売買契約を結んだ場合、原則として、Cのために行われた売買契約とみなされます(民法100条)。なお、Cが商人の場合、Aのためにすることを示さなくても、代理契約が成立します(商法504条)。

(3)有効な契約が行われていること

上図の例では、BとC間で、建物と土地の有効な売買契約が行われていることが必要です。

③代理権がない者の代理行為

(1 ) 無権代理

① 無権代理(意昧)

無権代理とは、代理権がないのに代理人と称して相手方と代理行為をすることです。本人にその法律効果は帰属しません。たとえば、本人Aから頼まれでもいないのに、Cが勝手にAの代理人であると称してB所有の建物と敷地(土地)の売買契約を結ぶことなどです。BC聞の売買契約の効果はAに及びません。

② 追認

追認とは本人が代理人の行為を後で認めることで、追認すると契約のときにさかのぼって有効になります(民法113条、116条)。①の例では、AがBC間の売買契約を認めると売買契約のときから有効になります。

③相手方の保護

(i ) 相手方の催告権

相手方の善意・悪意にかかわらず、相手方は本人に対して、相当の期間を定めて無権代理人の行為を追認するか否かを催告することができます。本人から期間内に確答をしないときは、追認を拒絶したものとみなされます(民法114条)。

(ii )相手方の取消権

相手方が無権代理について代理権がないことを知らないときは、無権代理人の行為を取り消すことができます(民法115条)。

(iii)無権代理人の責任

相手方が無権代理について善意で過失もない場合は、無権代理人に対して当該契約の履行か損害賠償のいずれかを請求することができます(民法117条)。ただし、無権代理人が行為能力を有しないときまたは(ii)の取消権を行使したときは請求できません。

(2)表見代理(相手方の善意無過失が必要)

①表見代理(意味)

表見代理とは、相手方から代理人を見て、代理権があるように見えるとき、その外観を過失なく信頼した相手方を保護する必要があり、一定の要件の下に認められます。
表見代理に該当すると代理権がなくとも代理権があったのと同様に本人に効果が帰属します。

② 種類

(i ) 代理権を他人に与えた旨を表示した場合

代理権を与えていないのに、相手方に対して他人に代理権を与えたと表示したときで、代理人とされた者が売買などの代理行為をした場合、相手方の善意無過失が要件と
なります。たとえば、AがCに代理権を与えていないのにもかかわらず、Cに土地売却の委任状を交付する場合で、相手方Cが善意無過失のときです。

(ii )代理人が権限外の行為をしたときで、相手方が善意無過失のとき

代理人がもともとの代理権の範囲を超えた行為をしたときです。

(iii )代理権消滅後の行為で、相手方が善意無過失のとき

代理権が消滅したにもかかわらず、代理行為を行ったときです。





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