学習のポイント

・有効な遺言であるための方式について理解しよう。
・遺言の効力に影響を及ぼす事項をしっかり覚えよう。

①遺言の方式

遺言は、民法の定める万式に従って作成しなければなりません(民法967条)。
遺言は、遺言者が死亡することによって効力が発生しますので、その内容をあらかじめ明確なものとしておく必要があるためです。

  • 普通方式
    自筆証書遺言、公正証書遺言、秘密証書遺言
  • 特別方式
    死亡の危急に迫った者の遺言、伝染病隔離者の遺言、在船者の遺言、船舶遭難者の遺言

(1)自筆証書遺言(民法968条)

遺言者が、その全文、日付及び氏名を自書し、これに印を押して作成します。
自書によりますから、ワープロやパソコンで作成したり、ビデオの映像で作成しでも、自筆証書遺言とはなりません。
日付について、「吉日」というように、作成日を明確にできない記載をしますと、その遺言は無効となってしまいます。

(2)公正証書遺言(民法969条、969条の2)

証人2人以上の立会いのもとで、遺言者が遺言の趣旨を公証人に口授し、公証人がこれを筆記し、遺言者及び証人にこれを読み聞かせ、または閲覧させ、その正確なことを確認した後、遺言者及び証人がこれに署名し印を押し、その証書が公正証書方式による旨を付記して公証人が署名し印を押す方式です。

(3)秘密証書遺言(民法970条)

遺言者が証書に署名し印を押したうえで、その証書を封じ、証書に用いた印章をもって封印した封書を公証人及び証人2人以上の前に提出し、併せて自分の遺言書であることを申述し、公証人が日付と遺言者の申述を封紙に記載した後、遺言者及び証人がともに署名し印を押すことにより作成される遺言です。

②遺言書の検認

遺言書の保管者や遺言書を発見した相続人は、相続の開始を知った後、遅滞なく、これを家庭裁判所に提出して、その検認を請求しなければなりません。
検認は、遺言書の存在を明確にする手続きであり、検認を経たからといって遺言書が有効とされるわけではありません。
公正証書遺言は、遺言書について検認手続きをする必要がありません。自筆証書遺言、秘密証書遺言及び特別方式の遺言について、検認が必要です。

③遺言能力

15歳に達した者は、遺言をすることができます(民法961条)。未成年者であっても、15歳になれば、遺言の意味が理解できる判断能力が認められるからです。

④成年被後見人の遺言

成年被後見人も事理を弁識する能力を一時回復したときには、有効な遺言をすることができます。ただし、事理を弁識する能力を一時回復していた状態であることの確認のため、医師2人以上の立会いが必要とされています (民法 973条。)

⑤方式を欠く遺言の効力

遺言は方式を守らずに作成されると、遺言としての効力を生じないのが原則です。しかし、秘密証書による遺言が、その方式に欠けるため無効なときでも、自筆証書遺言の方式を具備している場合には、自筆証書による遺言としての効力を有することにしています(民法971条)。

⑥共同遺言の禁止

遺言は、2人以上の者が同一の証書ですることができません。内容や効力発生時期についての法律関係を複雑にしないため、共同遺言が禁止されています。

⑦遺言の撤回及び取消し

(1)遺言の撤回(民法1022条)

遺言者は、いつでも、遺言の方式に従って、その遺言の全部または一部を撤回することができます。

(2)遺言の抵触(民法1023条)

前の遺言が後の遺言と抵触するときは、その抵触する部分については、後の遺言で前の遺言を撤回したものとみなします。
また、遺言が遺言後の生前処分と抵触する場合も、その抵触する部分については、生前処分で前の遺言を撤回したものとみなします
たとえば、遺言で与えることにしていた宝石を遺言者が他人に譲渡してしまった場合、その遺言は、その部分について撤回したものとみなします。

(3)遺言書または遺贈の目的物の破棄(民法1024条)

遺言者が故意に遺言書を破棄したとき、その破棄した部分については、遺言を撤回したものとみなします。
また、遺言者が故意に遺贈の目的物を破棄したとき、その破棄した部分については、遺言を撤回したものとみなします。

⑧遺言の効力の発生時期

遺言は、遺言者の死亡の時からその効力を生じます(民法985条)。
遺言に停止条件を付した場合において、その条件が遺言者の死亡後に成就したときは、遺言は、その条件が成就したときからその効力を生じます。





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