学習のポイント

・相続人の法定相続分について、民法で定めていることを学習しよう。
・相続人が複数人いる場合には、図に描いて検討しよう。

①相続

相続人(相続する人)は、相続開始の時から、被相続人(相続される人)の財産を承継します(民法896条)。
相続は、被相続人の死亡によって開始します。被相続人となる人の生前に相続が開始されることはありません。

②相続財産

相続の対象となる財産は、被相続人の財産に属した一切の権利義務です。このようなことから、相続による承継のことを企業の合併による承継と併せて、一般承継あるいは包括承継ということもあります。
土地や建物などの不動産、貴金属、宝石、自動車などの動産、預金債権、貸金債権や代金債権などの債権(プラス財産)はもちろんのこと、借入金などの債務(マイナス財産)も相続財産として相続の対象となります。賃貸借契約における貸主の地位、借主の地位ともに相続の対象となります。
ただし、年金の受給権などの被相続人の一身に専属したものは、性質上その被相続人限りの権利ですから、相続しません。使用貸借における借主の地位も相続人に承継しません。また、被相続人が有していた身元保証人の地位も相続人に承継しません。

③相続人

(1)配偶者(民法890条)

配偶者(婚姻関係にある夫からみて妻、妻から見て夫のこと)は常に相続人となります。
婚姻関係を前提としますから、内縁関係にある者は、配偶者としての相続人にはなりません。

(2)子(民法887条1項)

被相続人の子は、第1順位の相続人となります。
実子養子を問わず、生まれた順序、性別を問わず、婚姻しているかどうか、氏が同じであるかどうかを問わず、子であれば、相続人となります。胎児も、相続に関しては、すでに生まれたものとみなされ、相続人となります。

(3)直系尊属(民法889条1項1号)

被相続人の直系尊属(父母、父母が死亡している場合の祖父母など)は、第1順位の相続人である子がいない場合に、第2順位の相続人となります。
直系尊属に父母と祖父母がいる場合、被相続人から見て親などの近い者つまり父母の方が相続人となります。父母ともに死亡している場合に祖父母が直系尊属として相続人となります。

(4)兄弟姉妹(民法889条1項2号)

第1順位の相続人である子、第2順位の相続人である直系尊属ともにいない場合に、兄弟姉妹が第3順位の相続人となります。

配偶者 (常に相続人)  第1順位の相続人:子
第2順位の相続人:直系尊属
第3順位の相続人:兄弟姉妹

 

④代襲相続

相続人となるべき子が、被相続人の死亡以前に死亡し(同時死亡を含む)、相続欠格事由に該当し、または相続の廃除を受けた場合に、相続人となるべき子の子(被相続人の係のこと)が相続人となります(代襲相続、民法887条2項、3項)。
これに対して、相続人(子のこと)が相続の放棄をした場合には、その相続人の相続人(孫のこと)は代襲相続しません。

⑤法定相続分

① 配偶者のみが相続人の場合

配偶者が全財産を相続します。

② 子のみが相続人の場合

子が数人いる場合は、共同相続人となり、頭割りの分を相続分としてそれぞれ相続します。
子の間に、婚姻関係にある夫婦から生まれた嫡出子と婚姻関係にない夫婦から生まれた非嫡出子がいる場合、非嫡出子の相続分は、嫡出子の相続分と同じです。

③ 直系尊属のみが相続人の場合

同一親等の直系尊属が数人いれば(父母がいる場合など)、共同相続人となり、頭割りの分を相続分としてそれぞれ相続します。

④ 兄弟姉妹のみが相続人の場合

兄弟姉妹が数人いる場合、共同相続人となり、頭割りの分を相続分としてそれぞれ相続します。
共同相続人となる兄弟姉妹のうちに、被相続人と両親を共にする者と、その一方のみを共にする者がいる場合、一方のみを共にする者の相続分は、両親を共にする者の相続分の2分の1とされています。

⑤ 配偶者と子が共同相続人となる場合

配偶者が2分のl、子が2分のlの割合で相続財産を相続します。
子が数人いる場合に、子の相続分については、子の相続分である2分のlを「②子のみが相続人の場合」の基準で分けます。

⑥ 配偶者と直系尊属が共同相続人となる場合

配偶者が3分の2、直系尊属が3分のlの割合で相続財産を相続します。直系尊属が2人いる場合には、直系尊属それぞれ6分の1となります。

⑦ 配偶者と兄弟姉妹が共同相続人となる場合

配偶者が4分の3、兄弟姉妹が4分の1の割合で相続財産を相続します。





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