学習のポイント

・雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇の確保について学習しよう。
・職場におけるセクシュアル・ハラスメン卜防止の措置を理解しよう。

①男女雇用機会均等法

(1)目的

●法の下の平等を保障する日本国憲法の理念にのっとり雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇の確保を回る
●女性労働者の就業に関して妊娠中及び出産後の健康の確保を回るなどの措置を推進する

(2)基本的理念

少子高齢化が進行している中で、経済社会の活力を維持するという課題に応えるため、男女雇用機会均等法(正式名称は「雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇の確保等に関する法律」) が制定されました。
基本的理念は2つあります。1つは、労働者が性別により差別されないことです。もう1つは、女性労働者にあっては母性を尊重されつつ、充実した職業生活を営むことができるようにすることです。働く女性が子育てをしながら働けるという雇用環境を整備していくことを日指しています。
そして、事業主や国・地方公共団体には、この基本的理念に従って、労働者の職業生活の充実が図られるように努めなければならないという努力義務が課せられています。

②性別を理由とする差別の禁止

(1)募集・採用

事業主は、労働者の募集及び採用について、その性別にかかわりなく均等な機会を与えなければなりません(男女雇用機会均等法5条)。

(2)募集採用以外の事項

事業主は、次に掲げる事項について、労働者の性別を理由として、差別的取扱いをしてはなりません。
① 労働者の配置、昇進、降格及び教育訓練
② 住宅資金の貸付けその他これに準ずる福利厚生の措置であって厚生労働省令で定めるもの
③ 労働者の職種及び雇用形態の変更
④ 退職の勧奨、定年及び解雇並びに労働契約の更新

(3)間接差別

事業主は、募集・採用から解雇に至までの措置であって労働者の性別以外の事由を要件とするものであっても、実質的に性別を理由とする差別となるおそれがある措置については、合理的理由がある場合でなければ、その措置を講じてはなりません(男女雇用機会均等法7条)。

(4)女性労働者に係る措置に関する特例

事業主が、雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇の確保の支障となっている事情を改善することを目的として女性労働者に関して行う措置を講ずることを妨げるものではありません(男女雇用機会均等法8条)。女性労働者を優遇する措置を講ずることができるのです。

(5)婚姻、妊娠、出産などを理由とする不利益取扱いの禁止

① 事業主は、女性労働者が婚姻し、妊娠し、または出産したことを退職理由として予定する定めをしてはなりません。
② 事業主は、女性労働者が婚姻したことを理由として、解雇してはなりません。
③ 事業主は、雇用する女性労働者が妊娠したこと、出産したこと、労働基準法の規定による産前産後の休業をしたことなど、妊娠または出産に関する事由であって厚生労働省令で定めるものを理由として、当該女性労働者に対して解雇その他不利益な取扱いをしてはなりません。
④ 妊娠中の女性労働者及び出産後1年を経過しない女性労働者に対して為された解雇は、無効とされます。ただし、事業主が、当該解雇が妊娠したこと、出産したことなどを理由とする解雇でないことを証明したときは、この限りではありません(男女雇用機会均等法9条)。

③事業主の講ずべき措置

(1)職場における性的な言動に起因する問題に関する雇用管理上の措置

① 事業主は、職場におけるセクシュアル・ハラスメント防止のための措置(雇用する労働者からの相談に応じ、適切に対応するために必要な体制の整備その他の雇用管理上必要な措置)を講じなければなりません(男女雇用機会均等法11条1項)。
なお、セクシュアル・ハラスメントは、女性労働者に対するものに限らず、男性労働者に対するものも対象になります。
② 厚生労働大臣は、職場におけるセクシュアル・ハラスメント防止のため必要な措置を講じようとしない事業主に対して、報告を求め、または助言、指導、もしくは勧告をすることができます。
この勧告を受けた事業主がこれに従わなかったときには、その旨を公表されることがあります。
③ 事業主が職場におけるセクシュアル・ハラスメント防止のための必要な措置を講じないため、事業の執行について従業員が被害を受けた場合、その従業員は企業に対して使用者責任に基づき慣害賠償を請求することができます。
④ セクシュアル・ハラスメントを行った従業員は、強制わいせつ罪、強要罪などの刑法上の責任を問われることがあります。

(2)妊娠中及び出産後の健康管理に関する措置

事業主は、厚生労働省令で定めるところにより、その雇用する女性労働者が母子保健法の規定による保健指導または健康診査を受けるために必要な時間を確保することができるようにしなければなりません(男女雇用機会均等法12条)。
また、事業主は、その雇用する女性労働者が母子保健法の規定による保健指導または健康診査に基づく指導事項を守ることができるようにするため、勤務時間の変更、勤務の軽減などの必要な措置を講じなければなりません。





第3節へ進む

第1節へ戻る

問題演習にチャレンジ!