学習のポイント

・債務者が履行しない場合の債権の回収について学習しよう。
・債務者の資産状況が悪化した場合の債権回収の方法について理解しよう。

①自力救済の禁止

債権者は、債務者が債務の履行をしようとしない場合であっても、直接に債権額に相応した債務者の財産を持ち去ることはできません。原則として、自力救済は禁止されているのです。新たな紛争の発生を防ぐためにも、債権者は裁判手続きを経た債権回収の方法によらなければなりません。

②裁判手続きによる債権回収

(1)訴訟手続きとは

債権者が原告となり債務者を被告として、民事訴訟法により債権額の支払いを求める給付訴訟や目的物の引渡しを求める給付訴訟を提起するという方法です。
「訴えの提起」→「口頭弁論」→「判決」という慎重な手続きによるため、勝訴判決を得るまで時聞がかかります。敗訴した当事者は、控訴さらに上告をして争うことができます。

(2)少額訴訟とは

債権額が60万円以下の金銭の支払いを求める場合に、1回の口頭弁論で判決を下す手続きです(民事訴訟法368条)。迅速な事件処理により勝訴判決を得ることができます。しかし、金銭以外の物の引渡しを求める場合には使えません。

(3)支払督促

金銭その他の代替物または有価証券の一定数量の給付を目的とする請求について、債権者の申立に応じて簡易裁判所書記官が為す債権回収の手続きです(民事訴訟法382条)。口頭弁論を経ないので、迅速な事案処理が為されます。債務者の言い分を聞かずに為されるので、債務者の異議があると、通常の訴訟手続きに移行します。強制執行をするための債務名義とするには、支払督促に仮執行宣言の付与を受けておく必要があります。支払督促は、不動産や絵画など代替性のない物の引渡しを求める場合には使えません。

(4)即決和解(起訴前の和解)

物の引渡しについて紛争が生じた場合に、簡易裁判所において即決和解の手続きをしておけば、和解の内容に応じて債権者は債務者から物の引渡しを得られるという、金銭の支払い以外においても債務名義とすることができる手続きです。
紛争解決に向けた当事者の和解をするという合意が前提となります。

③強制執行

債権者が債権の請求について勝訴判決を得たからといって、債務者が弁済に応ずるとは限りません。そこで、債権の回収を実現するためには、さらに裁判所による強制執行の手続きを経る必要があります。この強制執行をするためには債務名義が必要とされています(民事執行法22条)。ここでは代表的な債務名義について取り上げます。

(1)確定判決

判決が為されていても、判決に不服の当事者は上訴により争うことができます。
そこで、上訴期間の経過などにより、もはや争うことができない状態になったときに、判決は確定し、判決の効力が生じます。給付判決の場合には、確定することにより執行力が生じ、その確定判決が債務名義となります。

(2)仮執行宣言付き支払督促

支払督促について仮執行宣言の付与がされることにより債務名義となります。

(3)即決和解(起訴前の和解)

即決和解の和解調書が債務名義となります。

(4)認諾条項付き公正証書

金銭の支払いについて強制執行を受けることを認めるということを内容とする公正証書を作成すると、その公正証書は債務名義となります。

④債務者の倒産

債務者の資産状態が悪化し支払い不能または債務趨過となり、事業の継続が困難になることがあります。このような状態を倒産といいます。この場合、倒産処理により債権者は債権の回収を図ることになります。
倒産処理には、任意整理と法的整理があります。任意整理は、当事者である債権者と債務者の協議による倒産処理です。債権の分割払いとすることが可能となります。法的整理は、裁判所が関与する手続きであり、再建型と清算型があります。

(1) 再建型整理

再建型整理は、再建を目的とするので、債務者の財産を配当に回すのではなく、再建のために債務者の財産を活用し、再建した事業の収益から債権の配当を得るという手続きです。

① 民事再生

経済的に窮境にある債務者の事業または経済生活の再生を図ることを目的とします。個人の場合、法人の場合、どちらも対象になります。

② 会社更生

経済的に窮境にある株式会社が、裁判所の指揮監督の下に会社の事業の維持更生を図ることを目的とします。会社のうちで株式会社が対象となります。

(2)清算型整理

清算型整理は、債務者の財産を処分して、すべて債権者への配当に回してしまう手続きです。

① 破産

債務者が債務を完済する見込みのない場合、強制的に債務者の全財産を換価し、総債権者にその債権額に応じて公平に配当し、清算をする手続きです。個人の場合、法人の場合ともに対象となります。債務者個人の破産の場合、債務者が白ら裁判所に申し出て、破産手続開始の決定を受けます。いわゆる自己破産です。

② 特別清算

清算株式会社に、清算の遂行に著しい支障をきたすべき事情があるとき、または債務超過の疑いがあるときは、特別清算となります。対象は清算株式会社です。





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