学習のポイント

・株式会社の機関の種類とそれぞれの特徴を覚えよう。
・株主総会、取締役、監査役がそれぞれに対し、互いにどのような影響を与えているかを理解しよう。

①機関の種類

(1)種類全般

・株主総会            ・会計監査人
・取締役(取締役会、代表取締役)  ・委員会(指名委員会、監査委員会、報酬委員会)
・会計参与            ・執行役(代表執行役)
・監査役(監査役会)

(2)特徴

・株主総会と取締役は必要機関――設置義務がある
・公開会社では取締役会は必要機関――設置義務がある
・大会社では会計監査人は必要機関――設置義務がある
・大会社かつ公開会社は監査役会か――設置義務がある
委員会のいずれかが必要機関

②株主総会

(1 )株主総会(意味)

株主総会とは、株式会社において株主によって構成される機関で、会社の組織・運営・管理その他株式会社について一切の事項について決めることができる最高の意思決定機関です。

(2)決議事項

決議事項とは、定款の変更、資本の減少、会社の解散、合併、事業の譲渡、計算書類の承認、剰余金の配当、取締役・会計参与・監査役の選任と解任、会計監査人の選任と解任、取締役・会計参与・監査役の報酬の決定などです。

③取締役

(1)取締役

取締役は、定款に別段の定めがある場合を除き、対内的には株式会社の業務を執行し、対外的には会社を代表します(会社法348条1項、349条)。1人または2人以上の取締役を置かなければなりません(会社法326条1項)。ただし、代表取締役が選ばれると、代表取締役が株式会社の業務を執行し、対外的には会社を代表することになります(会社法349条)。

(2)会社との関係

① 委任の規定に従う

取締役は、株式会社の決議によって選ばれ(会社法329条1項)、取締役と会社の関係は委任の規定によります(会社法330条)。その結果、善良な管理者としての注意義務(善管注意義務(民法644条))、法令・定款・株主総会の決議を遵守し、忠実に職務を行う義務(忠実義務)を負います(会社法355条)。

② 競業避止義務と自己取引の制限

競業避止義務とは、取締役は自分の会社の事業と同種の取引をするには株主総会の承認を受けることが必要という義務で、自己取引の制限とは、会社に損害を与えるおそれのある取締役と会社との取引は株主総会の承認が必要(会社法356条)とするものです。

(3)取締役の責任

① 会社に対して

取締役が任務を怠って会社に損害を与えた場合に、損害賠償責任を負います(会社法423条)。

② 第三者に対して

取締役がその職務を行うときに、悪意または重大な過失によって会社の債権者などの第三者に損害を与えた場合、損害賠償責任を負います(会社法429条)。

③ 刑事責任

会社の財産的な基礎を危うくさせるような行為をした場合、特別背任罪や汚職の罪などに問われます。

④監査役

(1)監査役(意味)

監査役は、会社の業務全般にわたり、取締役と会計参与の職務執行を監査する機関です(会社法381条)。監査には、取締役の職務執行を監査する「業務執行」と計算書類を監査する「会計監査」があります。

(2)主な権限

・いつでも取締役、会計参与、支配人などの使用人に対し、事業の報告を求めることができます(会社法381条2項)。
・取締役会に出席し、必要な場合には意見を述べなければなりません(会社法383条1項)。
・取締役会の招集を請求できます(会社法383条2項)。
・取締役の法令や定款の違反行為の差止めを請求できます(会社法385条)。
・取締役と会社間の訴訟において会社を代表します(会社法386条)。

⑤委員会設置会社

委員会設置会社とは、指名委員会、監査委員会、報酬委員会を置く株式会社のことです(会社法2条12号)。株式会社は定款で委員会設置会社となることができます(会社法326条2項)。委員会設置会社では、取締役会を設置しなければなりません(会社法327条1項)。執行役が取締役会で選ばれ業務執行を行い、会社を代表する機関として代表執行役が取締役会で選ばれます(会社法402条、420条)。その結果、取締役は業務執行権を有しないことになります(会社法415条)。

⑥支配人

支配人とは、支店長や営業所長などの肩書きがついた者で、会社に代わって、その事業に関して一切の裁判上または裁判外の行為をする権限を持つ会社の使用人のことです。株式会社の支配人は取締役が選びます(会社法348条3項)。
これに対して、支配人でないのに会社の本店または支店の事業の主任者としての名称を付けた使用人を表見支配人といいます。





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