学習のポイント

・権利義務の主体は、自分の名前で契約を結ぶことができる者を指します。
・制限行為能力者の種類(未成年者、成年被後見人、被保佐人、被補助人) とその特徴と違いを理解しよう。

① 権利義務の主体

(1 )権利義務の主体となる者(自然人と法人がなれる)

自然人は現に生存している個人、法人は個人以外に法人格を認められたもので、会社などです。これら権利義務の主体となれる者は、自分の名前で権利を得、義務を負うことができます。この権利・義務の主体となることができる能力を権利能力といいます。権利能力はすべての自然人と権利能力を与えられる要件を満たした法人に与えられます。

(2)意思能力(権利能力があることが前提)

意思能力は、自分の行為の結果を判断できる精神的能力で、意思能力がない者の行為は無効です。たとえば、6歳程度以下の子、重い精神障害者は意思能力がないとされます。その結果、たとえば、重い精神障害者が自己の土地や建物の売買契約を他人と結んでもその契約は無効で何らの効力も生じないことになります。

(3)行為能力(意思能力とは観点が異なる)

行為能力は自分だけで法律行為(契約)を結ぶことができる能力のことです。
行為能力の制度は、意思能力がない者、またはあっても不十分な者を年齢や一定の手続によって、画一的に行為能力があるか再かを区別する制度です。意思能力が個別・具体的に判断されるのとは異なります。行為能力が認められない者を制限行為能力者といい、制限行為能力者の行為は無効ではなく取り消すことができるにすぎません。取り消されるまでは有効です。

② 制限行為能力者

(1 ) 制限行為能力者とは

制限行為能力者は、有効な法律行為を単独ではすることができない者のことで、具体的には、未成年者、成年被後見人、被保佐人、被補助人の4種類です。

① 未成年者

未成年者は満20歳になっていない者をいいますが(民法4条)、例外として、20歳未満でも婚姻すれば成年者として扱われます(民法753条)。未成年者が法定代理人の同意を得ないで、行った法律行為(契約)は取り消すことができます(民法5条1項、2項)。法定代理人は親(親権者)や後見人です。取消しは、法定代理人、未成年者本人のいずれからでも行うことができます(民法120条1項)。
ただし、未成年者が贈与を受ける行為や債務を免除されるなど、単に権利を得たり義務を免れる場合のように単独で契約などの法律行為を行える場合があります(民法5条1項ただし書、3項、6条)。
なお、法定代理人が未成年者を代理して契約を結んだ場合、完全に有効な行為となり、法定代理人、未成年者のいずれも取り消すことはできません。

② 成年被後見人

成年被後見人は、精神上の障害によって物事の区別が判断できない状態であると家庭裁判所によって審判を受けた者です(民法7条)。成年被後見人の行為は、原則として取り消すことができるが、日用品の購入その他日常生活に関する行為については、単独で行うことができるので取り消せません(民法9条)。
成年被後見人の行為は成年後見人が代理して行うが同意権はありません。取消しは、成年後見人、成年被後見人のいずれからでも行うことができます(民法120条1項)。

③ 被保佐人

被保佐人は、精神上の障害によって物事の区別をする力が著しく不十分で、あると家庭裁判所によって審判を受けた者です(民法11条)。被保佐人は、一定の重要な行為については、保佐人の同意が必要であり、同意がない場合は取り消すことができます(民法13条4項)。たとえば、借金や不動産に関する売買契約を結ぶことなどです。保佐人は特定の法律行為について被保佐人の申立てか同意があれば、代理権を与えられます(民法876条の4)。取消しは、保佐人、被保佐人のいずれからでも行うことができます(民法120条1項)。

④ 被補助人

被補助人は、精神上の障害によって物事の区別をする力が不十分であると家庭裁判所によって審判を受けた者です(民法14条)。補助人は審判により特定の行為に関して被補助人の申立てか同意があれば、同意権と代理権を与えられます(民法17条1項、876条の9)。特定の行為について補助人の同意を得ないで為された行為は取り消すことができます(民法17条4項)。取消しは、補助人、被補助人のいずれからでも行うことができます(民法120条1項)。

③ 法人

(1 ) 法人(意昧)

法人とは、自然人の集合した団体(社団)と財産の集合自体(財団)に権利能力が与えられたものです。団体や財産の集合が白らの名前で契約を結ぶことがで
きる結果、団体や財産の集合の代表者の名前で契約を結ぶ必要はありません。

(2)公法人と私法人

国と法人格を持つ公共団体(都道府県、市町村など)を公法人といい、それ以外の法人を私法人といいます。

(3)私法人(社団法人と財団法人に分類される)

常利事業を営むことを口的とする法人を営利法人、学術、技芸、慈善その他の公益を目的とする法人を公益法人といいます。

(4)分類





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