学習のポイント

・法人の財産は、貸借対照表を作成して会社の財政状態を明らかにすることです。
・不動産登記制度の存在意義と一不動産一登記記録の原則を理解しよう。

①法人の財産

(1)貸借対照表の作成

企業の財産を管理するべき法律については、財産の種類によって法律的性質が異なる以上、財産の種類ごとに管理する必要があります。具体的には、貸借対照表を作成して資産状況を整理して表す必要があります。貸借対照表は、企業の資産・負債・純資産を記載することによって、企業の財政状態を明らかにする計算書類の1つです。ここでは、貸借対照表の資産の部に記載されるものが問題となります。

(2)流動資産と固定資産

代表的なものが流動資産と固定資産です。流動資産は、原則として、決算日から1年以内に現金化できる資産で、具体的には、現金、預金、売掛金、商品、製品、原材料などがあります。これに対して、固定資産は、企業が長期的に利用することを目的として所有する資産であり、具体的には、土地、建物、機械設備、知的財産権などがあります。

②固定資産の管理方法

(1)不動産

① 動産との違い

不動産は土地とその定着物であり、定着物の代表例が建物です(民法86条1項)。不動産登記法では、土地と建物のみを不動産といいます。不動産は動産に比べ価値が高く、企業においても大きな意味を有しています。また、不動産は動産に比べ、頻繁に譲渡されるわけでもなくその反面、建物とその敷地の所有権者が異なる場合や借金のために抵当権などの担保物権が設定されたり、マンションの法律関係など複雑な権利関係を生ずる場合があります。

②不動産の公示方法(不動産登記制度)

不動産に関する権利を公示して権利内容を知らせ、新たに購入など新しく法律関係に入る者に予期せぬ不利益を与えないように取引の安全を図るために認められたのが不動産登記制度です。不動産の法律的な管理は登記記録を基礎として実施され、登記記録は登記官が登記簿に登記事項を記録したものです。以前は、この記録は紙にされていましたが、登記事務のコンピュータ化を経て、平成20年7月には、すべての登記所がオンライン庁と指定されました。その結果、登記事項を確認するために、だれでもその不動産を管轄する法務局または地方法務局、その支局、出張所で、従来の登記簿の謄本・抄本の交付及び閲覧に代わるものである登記事項証明書、登記事項要約書などの交付を受けることができるようになりました。

(2)登記簿と登記記録

登記は、登記官が登記簿に登記事項を記録することによって行なわれます。「登記事項」とは、登記記録として登記すべき事項のことで、1筆の土地、1個の建物ごとに作成される電磁的記録の内容として登記すべき事項です。以上の電磁的記録が登記記録です。
これに対して、登記簿は登記記録が記録される帳簿で、磁気ディスクで調製するもので、多くの登記記録を集めて記録したものです。

(3)不動産登記簿のしくみ

不動産登記簿は、不動産の表示に関する登記と不動産の権利に関する登記を記録する帳簿で、磁気ディスクで調製されます。登記記録は表題部と権利部に分かれ、権利部はさらに甲区、乙区に分けられています。

(4)登記の単位と一不動産一登記記録の原則

①登記の単位

土地の個数は「筆」ごとに表され、1個の土地を一筆の土地といいます。1個の土地を2個以上の土地に分けることを分筆、2個以上の土地を1個の土地にすることを合筆という。分筆、合筆によって土地の個数に変更が生じます。

②一不動産一登記記録の原則

一不動産一登記記録の原則とは、1筆の土地または1個の建物ごとに一登記記録を作成することをいいます。以下の3つの意味があります。
( i )同一不動産について、2つ以上の登記記録が設けられることはない。
(ii )同一登記記録に、2つ以上の不動産が登記されることはない。
(iii ) 1個の不動産の一部について、登記記録を設けることはできない。

(5)不動産登記簿の登記事項

記録事項  具体的に登記される事項
表題部   表示に関する事項 (土地)
所在、地番、地目、地積など
(建物)
所在、家屋番号、種類、構造、床面積など
権利部(甲区) 所有権に関する事項 所有権の保存、移転、差押え、仮差押えなど
権利部(乙区) 所有権以外の権利に関する事項 地上権、賃借権など(用益物権)
抵当権、根抵当権、質権など(担保物権)

 

(6)不動産の管理上の問題

第一に、税法上、不動産を所有していると固定資産税や都市計画税などを支払う義務が生じます。
第二に、企業会計原則上、建物については、一定方式で減価償却をする必要があります。
第三に、火災保険や賠償責任保険などの損害保険へ加入する必要があります。





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