学習のポイント

・手形の記載事項には4種類の区別があります。その中でも重要な必要的記載事項と白地手形の関係を理解しよう。
・手形の裏書の効力と小切手の一覧払いと特殊な小切手を理解しよう。

①手形による取引

(1 ) 記載事項

手形は記載事項が法律で厳格に定められているので、記載事項に不備があれば、手形全体が無効になります。また、統一手形用紙によって作成されているものを受け取る必要があります。

① 必要的記載事項

必ず記載しなければならない事項で、1つでも欠けると手形は無効になります。
たとえば、手形文句、手形金額、支払文句、支払期日 (満期)、支払地、受取人、振出日、振出地、振出人の署名です。

② 有益的記載事項(任意的記載事項)

手形に記載するか否かは振出人の自由ですが、記載すると法律的に効力が生じる事項です。たとえば、利息文句、支払場所(支払地とは別)などがあります。

③ 無益的記載事項

手形に記載しでも手形法上の効力が生じない事項です。たとえば、支払遅滞による損害賠償額の予定、「本手形は取立てないこと」という不呈示約款などです。

④ 有害的記載事項

その記載によって、その記載自体が無効になるだけでなく、手形全体が無効になってしまう事項です。たとえば、「商品と引換えに支払うこと」というように手形の支払いに条件を付け、または支払期日の欄に分割払いとする旨の記載をすることなどです。

(2)白地手形

①白地手形(意昧)

白地手形とは、手形の振出しにあたり、受取人や手形金額など手形に記載すべき内容が未だ確定していないために、手形要件の全部または一部を記入しないまま、後で所持人に空白を補充させる趣旨で振出人として署名した手形をいいます。
手形要件を欠くためにそのままでは手形としての効力は生じませんが、後日手形要件が補充されれば有効な手形となることを予定した未完成な手形として商慣習法上で認められています。

②白地手形の具体例

たとえば、受取人欄が白地か振出日が白地の手形です。前者は、裏書によらないで、手形をそのまま交付して譲渡することができるので、頻繁に利用されています。後者は振出日から満期までの期聞が長いことを表さないために振出されます。8ヵ月あるいは1年のように長いと振出人の資金繰りの悪さを印象づけることになるからです。

③白地手形の不当補充

白地手形の白地を補充する権利を補充権といいますが、あらかじめ為された補充権の内容に反して補充された場合は、そのことを知って(悪意)、または重過失によって知らないで取得した者以外の者に対しては、振出人は不当補充の内容どおりの債務を負うことになります(手形法10条、77条2項)。

(3)譲渡

① 裏書

手形は裏書によって譲渡されます。裏書とは、手形を譲渡する場合、手形の裏面に必要事項(裏書文句という)を記入した上で譲受人に手形を引き渡すことをいいます。譲渡する人を裏書人、譲渡する相手方を被裏書人といいます。

②裏書の効力

(i ) 権利移転的効力

裏書により手形上の権利が裏書人から被裏書人に移転することです。

(ii )担保的効力

手形を裏書譲渡すると、裏書人は被裏書人その他後者全員に対し担保責任を負うことです。たとえば、手形が振出人に適法に呈示されたにもかかわらず、振出人が支払い
を拒絶した場合、裏書人が代わって手形上の債務を負い振出人の支払いを担保することです。

(iii )資格授与的効力

裏書の連続した手形の所持人は、反証のない限り、正当な権利者と認められるので、実質的な証明をすることなく権利を行使する資絡が推定されます。

②小切手による取引

(1)振出

小切手の支払人は、銀行またはこれと同視できる信用金庫などに限られます。
小切手を振り出すためには、支払人となる銀行などと当座勘定取引契約を結ぶ必要があります。小切手はもっぱら支払いの手段であり、迅速に処理することが予定されています。そのため、常に支払いのための呈示が為された日を満期とする支払方法(一覧払い)とされます。

(2)特殊な小切手

① 線引小切手

小切手の表面に2本の平行線を引く方法。小切手の紛失、盗難を避けるための制度です。

② 先日付小切手

現に小切手を振り出す日よりも将来の日を振出日として記載する小切手のことです。実際に小切手を振り出す日には資金の準備ができていませんが、数日後には資金の準備ができる場合、取立てはその日以降とする約束で振り出されます。

③ 自己宛小切手

銀行が自分自身を支払人として振り出す小切手で預金小切手ともいいます。不渡りになる心配がほとんどありません。

③手形、小切手の不渡り

不渡りとは、支払銀行が手形交換所から手形を持ち帰り、手形振出人の当座預金から手形金を引き落とそうしたとき、当座預金の不足で引落としができない場合のことです。不渡りを出した者がそれから6ヵ月以内に2回目の不渡りを出すと銀行取引停止処分を受けます。





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