学習のポイント

・民法の認める契約の種類と契約の成立する要件を理解しよう。
・意思表示が問題となる場合、特に不存在の場合と瑕疵ある場合を区別し、効力の違い(有効、無効)を理解しよう。

①契約

(1 )契約(意昧)

契約は、相対立する2個以上の意思表示が合致することによって成立する法律行為です。たとえば、AがB所有の貴金属を買い、その代金をBに支払うという合意です。もしも、Aが代金を支払ったにもかかわらずBが貴金属をAに渡さなかった場合、裁判所に訴えて、契約内容を実現させたり損害賠償を請求することができます。この点で、単なる約束とは異なります。

(2)契約自由の原則

契約自由の原則とは、契約を結ぶか否か、だれと結ぶか、どのような内谷の契約とするか、どのような方式にするかは契約当事者の自由であるという原則です。

(3)種類

民法が認める13種頬の典型的な契約は以下のとおりです。
① 所有権が移転する契約→ (i ) 贈与 (ii)売買 (iii)交換
② 賃借型の契約→ (iv)消費貸借 (v)使用貸借 (vi)賃貸借
③ 労務型の契約→ (vii)雇用 (viii)請負 (ix)委任 (x) 寄託
④ その他の契約→ (xi)組合 (xii)終身定期金 (xiii)和解

②売買契約の成立

(1)成立

民法では、売買契約は、売主の「売りたい」 という申込みの意思表示と買主の「買いたい」という承諾の意思表示が合致したときに成立します(民法555条)。

(2)意思表示が問題となる場合 その1 (意思の不存在)

意思表示をする者が、表示した意思に対する真意を欠いている場合で、「心裡留保」、「虚偽表示」、「錯誤」の3種類があります。

① 心裡留保(民法93条)

心裡留保とは、表意者が真意でないことを自分で知りながら意思表示をすることです。原則として有効ですが、相手方が真意でないことを知っているか、または行為の当時に通常の注意をもっていれば知ることができた場合はその意思表示は無効となります。たとえば、Aは自己所有の建物を真意でなく外見だけBに移転し、そのことを知らずにBからその建物を買ったCに対して、AはBとの契約は無効なので明け渡せとはいえません。

② 虚偽表示(民法94条)

虚偽表示とは、表意者が相手方と通じて行った虚偽の意思表示のことです。原則として無効ですが、虚偽表示であることを知らない善意の第三者に対しては、意思表示が無効であることを主張できません。たとえば、AとBとの合意で、A所有の土地の所有権を外見だけBに移転し、それを知らないでBからその土地を買ったCに、Aは、AB問の契約は無効なので、Aに戻すように主張はできません。

③錯誤(民法95条)

錯誤とは、表意者が具立でない意思表示と気づかないで意思表示をすることです。たとえば、50万円を借りるつもりが、誤って500万円借りる旨の意思表示をした場合などです。意思表示の重要な部分について錯誤がある場合には無効となります。「意思表示の重要な部分」とは、その錯誤がなければ意思表示をしなかったであろうと思われるような重要な部分に錯誤がある場合です。
ただし、錯誤の原閃が表意者の重大な過失にある場合には、表意者から意思表示が無効であることを主張できません。

(3)意思表示が問題となる場合 その2 (瑕疵ある意思表示)

意思と表示との間で不一致はなく、表意者が自由な判断を妨害されて行った意思表示のことです。瑕疵は欠点、という意味です。

①詐欺による意思表示(民法96条)

他人にだまされて行った意思表示は有効ですが、表意者が意思表示を取消した場合は始めから無効になります。取消し前の善意の第三者には主張できません。

②脅迫による意思表示(民法96条)

他人の害意を怖いと感じてなされた意思表示で有効ですが、表意者が意思表示を取消した場合は始めから無効になります(民法96条)。取消し前の善意の第三者に対しでも主張することができます。この点が詐欺と異なっています。

(4)手付・内金

手付とは、売買契約が成立したとき買主が売主に一定額を交付する金銭のことです。民法では、解除権を留保する趣旨の手付(解約手付)が規定されています(民法557条)。買主は手付を放棄すれば債務不履行がなくても契約を解除できます。

(5)期限と条件

① 期限

期限とは、契約の効力または履行を将来発生することが確実な事実に関連づける特約のことです。期限には確定期限と不確定期限があります。

(i)確定期限

将来、到来する時期が確定しているものです。たとえば、子供が成人した日に建物を贈与するという場合が該当します。

(ii)不確定期限

将来、到来するのは確実だが、到来時期が不確定なものです。たとえば、ある人が死亡したときにその者の所有していた土地を売却する場合などです。

(iii)期限の利益

期限が与えられていると、期限の到来までは債務の履行を請求されず、その間、支払う必要はないので利益を受けることになります。これを期限の利益があるといいます。期限の利益は債務者のために定めたものと推定されます(民法136条1項)。たとえば、代金支払いの義務が3ヵ月後という場合、3ヵ月間は売買代金を支払う義務がなく、その問、他の目的に運用できるという利益があります。

② 条件

将来、ある事実が発生することが不確実な場合で、期限とは異なります。停止条件と解除条件があります(民法127条)。





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