学習のポイント

・派遣労働における派遣元事業主、派遣労働者及び派遣先の3者の関係について学習しよう。

①派遣労働

派遣労働は、派遣元事業主が、自己の雇用する労働者を、その雇用関係を維持しつつ、かつ、派遣先の指揮命令を受けて、その派遣先のために労働に従事させるという労働形態をいいます。
派遣先は、必要な技能を有する労働者を必要な期間だけ使うことができ、経営の合理化を図ることができますが、派遣労働者の雇用の安定が害されることになりがちです。そこで、労働者派遣事業法が制定されました。
労働者派遣事業法は、職業安定法と相まって労働力の需給の適正な調整を図るため労働者派遣事業の適正な運営の確保に関する措置を講ずるとともに、派遣労働者の保護等を図り、もって派遣労働者の雇用の安定その他福祉の増進に資することを目的とします(労働者派遣事業法1条)。

②労働者派遣事業法で使用される重要用語

  • 労働者派遣
    自己の雇用する労働者を、当該雇用関係の下に、かつ、他人の指揮命令を受けて、当該他人のために労働に従事させることをいいます。当該他人に対し当該労働者を当該他人に雇用させることを約してするものを含みません。
  • 派遣労働者
    派遣元事業主が雇用する労働者であって、労働者派遣の対象となるものをいいます。
  • 労働者派遣事業
    労働者派遣を業として行うことをいいます。

③労働者派遣事業を行ってはならない業務

① 港湾運送業務
② 建設業務
③ 警備業務
④ その他政令で定める業務
これらの業務について、労働者派遣事業を行ってはなりません(労働者派遣事業法4条1項)。
また、労働者派遣事業を行う事業主から労働者派遣の役務の提供を受ける者(派遣先)は、その指揮命令の下に当該労働者派遣に係る労働者をこれらの業務に従事させてはなりません(労働者派遣事業法4条3項)。

④派遣元事業主・派遣先・派遣労働者の関係

派遣労働には、派遣元事業主と派遣先との間での労働者派遣契約、派遣元事業主と派遣労働者との間での雇用関係、派遣先と派遣労働者との間での指揮命令という3つの関係が生じます。
派遣先と派遣労働者の間には雇用関係は生じません。

(1)労働者派遣契約

当事者の一方(派遣元事業主)が相手方(派遣先)に対し労働者派遣をすることを約する契約です。
労働者派遣契約の当事者(派遣元事業主と派遣先)は、労働者派遣契約の締結に際し、次の事項を定めるとともに、その内容に応じて派遣労働者の人数を定めなければなりません(労働者派遣事業法26条1項)。
① 派遣労働者が従事する業務の内容
② 派遣労働に従事する事業所の名称及び所在地その他派遣就業の場所
③ 派遣労働者を直接指揮命令する者に関する事項
④ 労働者派遣の期間及び派遣就業をする日
⑤ 派遣就業の開始及び終了の時刻並びに休憩時間
⑥ 安全及び衛生に関する事項
⑦ 派遣労働者から申出を受けた苦情の処理に関する事項
⑧ 派遣労働者の新たな就業の機会の確保、休業手当等の支払に要する費用の負担に関する措置その他の労働者派遣契約の解除にあたって講ずる派遣労働者の雇用の安定を図るために必要な措置に関する事項
⑨ 紹介予定派遣の場合に、従事すべき業務の内容及び労働条件その他の紹介予定派遣に関する事項
⑩ 厚生労働省令で定める事項

(2)派遣元事業主の講ずべき措置

派遣元事業主と派遣労働者との間には、労働契約に基づく雇用関係があります。
派遣元事業主は、雇用する派遣労働者または派遣労働者として雇用しようとする労働者について、各人の希望、能力及び経験に応じた就業の機会及び教育訓練の機会の確保、労働条件の向上その他雇用の安定を図るために必要な措置を講ずることにより、これらの者の福祉の増進を図るように務めなければなりません。

(3)派遣先の講ずべき措置

派遣先と派遣労働者との間には、指揮命令関係がありますが、雇用関係はありません。
派遣先は、派遣元事業主との間で締結した労働者派遣契約において定めた①~⑨の事項その他厚生労働省令で定める事項に関する労働者派遣契約の定めに反することのないように適切な措置を講じなければなりません。
派遣先は、その指揮命令の下に労働させる派遣労働者から当該派遣就業に関し、苦情の申出を受けたときは、苦情の内容を派遣元事業主に通知するともに、派遣元事業主との密接な連携の下に、誠意をもって、遅滞なく、苦情の適切かつ迅速な処理を図らなければなりません。
派遣先は、派遣労働者の派遣就業が適正かつ円滑に行われるようにするため、適切な就業環境の維持、診療所、給食施設などの施設であって派遣労働者が通常利用しているものの利用に関する便宜の供与などの必要な措置を講ずるように努めなければなりません。





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